2010/05/01

診療報酬改訂

脳動脈瘤頚部クリッピング術(一箇所)72000→103710
動脈形成術,吻合術 36000→52550

あまりお金に換算して考えてばかりはしたくないし,実際手術料はすべて病院に入るわけだけど,自分が,”これで何かあったら明日から外科医人生が終わるかもしれない”と思いながらしていることが100万越えと評価してもらえるのはちょっとうれしいように思います.

でも,今まで手術料が実感より安く見積もられていたことに,すっかり慣れてしまっている自分にも気付きました.(むしろ卑屈になってしまうくらいで,外科医はMな世界なのかも).

それと,クリッピングよりもアナストがこんなに高くなっている方が個人的には驚き感が大きいですね.

言いたくないと言いつつ,クリッピングとアナストで150万かぁ~.
これまで我慢して外科医をしている人には,この診療報酬改訂はもう少し外科医を続けるモチベーションになるかもしれない.すぐに慣れちゃうでしょうけど.

そもそも,正当な手術料の対価なんて誰にもわからないわけだから.

これから新たに医師になる学生さんとかは最初からこの値段・点数だから,これをもってして外科医を目指そうとか外科医が増えることにはあまりならないような気がします.

ブラックジャックみたいに1000万円とか5000万円とかならはっきりと効果が出るでしょうがね.

2010/04/17

脳ベラはもっと使え

1年ぶりの更新です.

先日,札幌で北海道脳神経外科手術手術研究会がありまして,札幌医大のビデオカンファレンスの流れをくむ,数少ない,純粋な手術の事を話し合う会です.ご意見番の端先生は相変わらずの元気さで,若者の手術ビデオに意見されており,とても勉強になりました.

その中での端先生語録より.

「もっと脳ベラを使ったらよろしい.」
端先生は,以前は脳ベラをなるべく使わないようにとおっしゃっていたようで,それを知っている元医局員はずっこけてしまうような発言のようです.
発言の趣旨は,昔はぐいぐい引っ張るような使い方だったからなるべく使わないように指導していたと.今時そんなことをする人はいなくて,やさしく脳を支えるように使うのであれば,何本でもたくさん使ったらいいじゃないかと.脳ベラをたくさん使って術野を作ってあげると手術が速くなるともおっしゃってました.

ただ,実際に脳ベラをたくさん使うと,おそらくヘラを支えるアーム(じゃばら)が邪魔になるのではと思います.
とは言え,使わないといつまでも脳ベラに習熟できないので,なるべくマイクロ操作のはじめの方から積極的に使って慣れることも必要と考えます.

2009/04/12

interhemiではFalx切開で位置推定

InterhemiでDisital ACA ANにApproachするときにDisorientationになりやすいです.当院では基本的にFrontal sinus開くのを覚悟で,Base側に開頭してProxymal sideからApproachしています.
しかし,Interhemiを剥離してうろうろしてしまうことがあります.
冷静にFalxを切開した部分を考慮してみると,そこからDome方向が推測できるはず.

かなりBase側でFalxを切った場合は,かなり手前にANはあるはず.
Falx切開部からそのまま剥離に進むと,Interhemiのもっともくっついてやりづらい所を操作しなければならない羽目になります.

もっと手前を探してみましょう.
ちなみにDistal ACA ANはFalxとくっついてしまうくらいだから,その程度の深さにあるはず.





Bridging Veinの存在にもよりますが,Frontal sinusが開かないくらいのやや高めに開頭,Falxを切ったときは,わりと近くにANがあるはず.
気づかずに奥を操作していて,ふと気づくとすぐ手前にDomeが顔を出してましたなんて・・・

2009/03/31

手術の最中に画像を見よう

手術中の予期せぬ合併症を避けるためには・・・自分がどこをやっているかOrientationをしっかり把握することが大事.と,脳卒中学会のイブニングセミナーで言ってました.

術者として動脈瘤に向かうとき,または動脈瘤と対面してしまうと,もう夢中になってマイクロから離れたくなくなります.しかし,この時点で記憶しているつもりの画像所見はけっこう曖昧ですね.
Orientationをつける,または動脈瘤に隠れている(SAHに埋もれている)Perforatorをイメージするためには,夢中になっていても一息ついて画像所見をもういちど見に行きましょう.

実は今でも,術者のいすを立つと,術者を変わられてしまうのではないかという不安に駆られてしまうのですが・・・

動脈瘤の手術は,地図を頼りのサイクリングに似ています.術者は,走りながら地図は見ることができない運転手と同じです.記憶を頼りにうろうろすると必ず道に迷います.まして脳内には青看板はありません.そのままクリップをかけるとよけいなものまで噛むかもしれません.面倒でも,気持ちが切れても,立ち止まって地図を見ることが事故を避けるのに必須です.

2009/03/11

慢性硬膜下血腫の血腫量を測定

普通の穿頭洗浄術で,いきなり生食を入れる前にチューブを硬膜下腔に入れて血腫を吸引します.以前はやってませんでした.「吸う」という動作が脳や血管を傷つけたらイヤだったので.

しかし,血腫を吸引してその量を大体把握するといいことがあります.
それは,CT,MRIでの所見に比べて吸引できる血腫量が少ないと,もしかして血腫が2層に分かれていて,その上層しか洗えていないことに気がつくわけです.
おおよそShiftしたり麻痺が出るくらいの血腫なら100mlは越えているでしょう.それに対して20~30mlしか吸えないときは,おかしいと考えてBurrholeから脳表が見えるか確認が必要です.見えなければ,Burrholeからでも隔壁や堅い血腫を破る必要があるかもしれません.

久々の更新の割には小ネタですみません.

2008/12/31

血管吻合は縫うところ以外が大事

年末ぎりぎり駆け込みの更新.手術が少なくなってきたのは事実ですが,それを言い訳にしないよう,何とか追加していくので来年もよろしくお願いします.


さて,いろんな学会などで血管吻合のワークショップが目につくようになりました.縫合練習用の人工血管もReasonableな値段で売り出されています.ネズミでの練習ノウハウが最近の若手向け手術本に紹介されています.

しかし実際の手術において,手術時間の短縮・手術成功の鍵は吻合前の準備で決まります.
STAの長さ,側枝のしっかりとした凝固または結紮,先端の処理,内腔の洗浄
開頭範囲(太いMCAをみつける),硬膜を広範囲に切ること
MCAの切開・・・内膜を傷つけない,STA断端より広く,MCA側枝のしっかりとした凝固.

吻合前にこれらの準備を怠ると,吻合作業そのものが大変になったり,吻合後の止血に手間取ったりしてしまいます.
また,準備でどこか失敗してしまうと,取り返しがつかないことが多いので注意が必要です.

2008/08/30

IC terminal ANの奥に注意・・・Optic tract

IC terminal ANのClipping.
Dome裏側のPerforatorとAnterior choroidal arteryを挟まないように気をつけましょう・・・・とは良く書いてある.

もうひとつ気をつける点が.
Domeの奥にあるのは?・・・・・Optic tractなんですね.
Clipを図の×印に入れすぎると,Optic tractを挟んで,視野障害となる可能性があるので,要注意です.

2008/07/19

小さなワタで,髄液コントロール

SAHの手術と思ってください.
イラストは左IC-PC ANの,いよいよNeck付近を剥離しています.


IC周囲のくも膜を剥離していると,ものすごい量の髄液が噴出してきます.特に,Neckの奥・ICの裏側に近いところをホジホジすると,フクシマ3Lサクションで吸いきれないくらいの髄液が出てきて,奥の視界が不良になります.
さてそんな時は?

サクションの先に小さいワタを置いて,ワタ越しに髄液を吸引します.
ごくごく小さいワタで良いので,それで驚くほど奥の髄液を良好に吸引できて,視界が良好になります.

2008/05/26

外向きIC-PC ANは注意しましょう

当たり前と言われてしまうかもしれませんが・・・

当たり前ばかり書いてあるブログなので.

正面から見て外(横)に出ているIC-PC ANは,術野としては立ち上がってこちらに向いてきます.
いつものつもりでSylvian fissureの深いところをバイポーラで開いた瞬間にDomeを破ってしまいかねません.注意しましょう.
まだICも見えてないし・・・と思ってごそごそやってると危ないです.とくに破裂は.
せめてSylvian fissureに入り込む前に,脳室ドレナージを打った後にSubfrontalに視神経~ICを確保しておきましょう.破れたらTemporary clipを入れられるし,自分が剥離している深さの目安になります.

2008/05/11

顕微鏡のピントは,基本ペダルで

手術は当然,浅いところから奥へと進んでいくわけですが,深くなっていく術野に常にピントをきちんと合わせることを意識しなければいけません.
ってことはつまり,何となくやっていると,術野が深くなってもピントが合ってないことに術者は気づかないことが多いわけです.モニターを見ている人はすぐに気がつきますが・・

サクションを駆使して,脳槽の深いところへ進んでいくわけですが,ひとつ進んだらピントを落とす(当院のマイクロではつま先右側のペダル),ちょっと進んだらまた右ペダル,を繰り返しましょう.

ピントを合わせるために,マウスピースでマイクロを動かすのは動きが大きくなり,素早い手術の妨げです.
いちいちハンドルを持つのも,もちろん遅くなります.

まとめ:マイクロ下で剥離が進むとピントがずれるので,素早くペダルであわせる.

2008/04/18

Acom aneurysm (Acom AN)は開頭の側頭部を使う

以前にも書きましたが,つい忘れがちなのでもう一度.
左側のイラストはどちらも左開頭です.
Sylvian fissureを剥離して,前頭葉と視神経の間を剥離,Interhemiを剥離,前頭葉に脳ベラをかけてたところです.
この辺までは,顕微鏡を寝せたり立てたりして,前頭葉越しにSubfrontal気味にApproachすることも多いです





しかし,いよいよA1を追って,同側のA1-2またはAcomにApproachするとき,前頭葉をさらに持ち上げつつあるときは,開頭の側頭側のSpaceから光を入れて,見上げるように視野を撮りましょう.それで前頭葉のRetractionを軽くすることができます.
Acom ANの開頭は,とかく前頭葉側を大きくすることが強調されていますが(対側の視神経までしっかり視るためには,それも大事),クリップに必要な視野・術野を得るためには,実は側頭部側が大事なのです.
もう一回肝に銘じましょう.

2008/03/20

Distal ACA ANのこつ

Distal ACA ANはFalxからのびている結合織状のもので覆われていることが多いです.
動脈瘤をきれいに出すためにはまとわりついている周囲の結合織との剥離が必要です.周囲の結合織のほとんどは,Falxの続きのような硬いものなので,ある程度はどんどん切断していって,動脈瘤を露出することになります.





Distal ACA手術の時には,早めにFalx側に脳ベラをかけましょう.



この絵だと開頭が大きすぎますね.

2008/03/07

慢性硬膜下血腫手術のコツ

慢性硬膜下血腫(CSDH)は,スタンダードにBurrhole開けて,硬膜下腔を生理食塩水で洗浄しています.

術前のCT,MRIでは見えない,血腫の隔壁が存在することが多いです.術後のCTで初めてわかるような.
なかでも隔壁が脳と平行になっていて,血腫が骨側と脳側の2層になっていることがあります.こういうとき,Burrhole開けて洗うと,あっという間に血腫が出なくなり,思ったより血腫量が少ない感じがします.
術後のCTで表面側のみ血腫が無くなり,脳側にたっぷりと残るはめになり,CT室からそのまま術場へ逆戻りになりかねません.
そうならないように,洗浄途中でBurrholeから脳表が見えることを確認しましょう.Burrholeは小さいので,無影灯の角度を調節しなければ見えません.それと,硬膜下腔の血腫を吸引してしまわないと見えません.
これらの工夫をして脳表がちらっとでも見えれば,ちゃんと洗えている可能性が高いです.もちろん,Burrhole部以外のところまでは見えませんが,手術中にこれくらいの気遣いは必要と思います.

2008/02/09

SAHの手術は予測が大事


手術をアクシデント無く,スピーディに進めるためには,予測が大事です.当たり前ですが,意外と忘れがち.
SAHの時,血腫を吸って構造物を確認していきます.確実に見て確認することはもちろん大事ですが,いちいちそれでは時間がかかります.何も考えずに血腫を吸っていて,見えた時には血管を吸っているかもしれません.
左のイラストは,リリケスト膜を破るために,IC外側の血腫を吸っているところです.漫然と吸っていると,前脈絡叢動脈(Anterior choroidal artery)を引っかけるかもしれません.そこに血管があることを強く意識しながら血腫を吸うと,ちらっと血管が見えただけで,確認することが出来てトラブルを回避できます.







こちらは(前交通動脈瘤)Acom ANに向かってアプローチしているところ.右前頭葉を視神経と剥離しつつめくっていきます(動脈瘤は後ろを向いているので,すぐには出てきません.)
聞かれれば,そこにA1が出てくるのは知っているはずですが,ついついめくってみて,見て,初めて手が止まります.
そうではなくて,そこにA1があるのを強く意識して(警戒して)めくっていけば,血腫の間からちょっと見えた段階で,手が止まり安全に手術を出来ます.

しつこいですが,当たり前のようで,いざその時に忘れがちです.

2008/01/26

ヴォイニッチの科学書で読んでもらいました.


手術に関する話ではありません.

脳神経外科速報 のおすすめの1冊,1枚,1軒というコーナーに,ほぼ毎月投稿しております.
2008年1月号に くりらじの科学系Podcastヴォイニッチの科学書を紹介いたしました.

せっかくなので番組に掲載された雑誌をお送りしたところ,番組内で取り上げていただきました.

とてもおもしろく,かつためになる番組なので,ぜひ一度お聞きください.