2007/05/21

脳ベラ Retracter の使い方

脳ベラの使い方は学会などでよく話題になりますよね.
うちで気をつけていることも,同じような事です.札幌医大(端和夫)系列なので,バディーハローを使ってます.
今まで行った施設は,どこも基本はバディーハローで,それが間に合わない時や,脳出血などのちょっとした開頭でエレファントバーが出てきてました.

1.脳ベラは脳・骨から浮かさない.頭に沿って曲げて使う.
うっかり手で脳ベラを押してしまっても,危険が少ないように.
2.先を効かす.
脳ベラの先端付近の術野を広くして,かつ手前の脳を押しすぎないようにするため.
3.脳全体を少し手前に引っ張り気味にひくようにします.





脳ベラを脳・骨から浮かしてしまうと,手でうっかり押すと先端が脳に突き刺さってしまいます.脳どころか,動脈瘤に突き刺さるおそれも.

先端を効かさないと術野は広くならないし,そのために,手前の脳を押し込みすぎてContusionをつくったりするおそれが.










実際にマイクロで見たところ.
左上のように脳ベラ全体が長く見えるときは,良くないかかり方.
右下のように,脳ベラ全体が短く見える時は,軽い力で術野が展開できるはず.視線の方向と脳ベラの方向が一致するのです.

おすすめのDVD

脳外科単科の病院勤めだと,正直,他科の疾患で不安になることがあります.
高齢者・動脈硬化疾患の方が多いので,心臓に関しては,判断を迫られることがよくあります.
不整脈が出ているモニターや,入院時の心電図を迅速に的確に,その危険性を判断する必要があります.
心電図の知識は,卒後15年にもなるとおぼろげになってきたり,知識そのものが古くなっていることもあります.かといって,心電図の本をもう一度読み直すほどの時間はなかなかとれません.
そこでこちらのDVDがお薦めです.
「もう迷わない!好きになる心電図」
財団法人 心臓血管研究所の山下 武志先生が,若い先生にやさしくクリアに教える形式です.
ケアネットのDVDは当たりはずれがありますが,これはいいです.
内容的には,教科書的な波形の意味は後回しにして,波形のの危険度を判断して,その場でどのように対処すべきかを教えてくれます.対処といっても,「何の薬を使うか」の前に,患者さんを見に行ったり,一人で対処できないと考えて人を呼んだりといった,より臨床的・実践的な判断材料を与えてくれます.
死なない不整脈には自信を持って様子を見ることもわかります.
12誘導の最低限見るべき波形も教えてくれるので,いっぱいある波形を前にして目が泳ぐことも無くなります.
もちろん,この最低限の知識ですごすことなく,このDVDの知識をきっかけにして,さらに興味を持って改めて心電図を勉強するいい入り口になってくれます.

2007/05/14

CEAは止血をしっかり

CEAのアプローチは,もちろんマクロで手術をするわけですが,脳の手術に比べてつい止血を怠りがちです.自分では,バイポーラでねちねちと止血しているつもりですが,いつのまにか結構赤くなってます.早く内頚動脈の末梢を確保したくて,急ぎがちなのもあるかもしれません.
気をつけるべきなのは,アプローチのはく離の際は,とにかく水できれいにしながら止血をしまくって,脳の手術並みにきれいな術野を保ちましょう.
きっと結果としてその方が早く,問題なく終わるでしょう.

ところで,各動脈を確保・遮断して内頚動脈をPlaque含めて切開する時に,Plaque部分では血管内腔(血液の通る腔)を確保して切った方が望ましいと考えます.しかし,もちろん血管内腔はものすごく狭窄しているので,そこを確認しながら切開するのは容易じゃないどころか,内腔を見失ってしまうこともたびたびです.しかも,この間は遮断状態なので,あせる時間帯でもあります.
不思議なのは,この辺のことが手術書などを見ても全然書いてないことなのです.それはつまり,CEAの上手な方々は,Plaqueの切り方に特にこだわりはないってことなのですよね.血管内腔を意識しないで切り込んでも問題ないってことなのでしょうか?

2007/05/05

ロベクトミーは思い切って

Interhemispheric app.を習得しなければと思いつつ,未だにTranssylvian app.でAcom ANの手術をすることが多いです.

高い動脈瘤の時はCingulate gyrus(帯状回)のLobectomy(ロベクトミー)をします.当然,Lobectomyの向こう側はすぐに動脈瘤のDomeなので,どうしても破裂が怖くて,Lobectomyはちょこちょこと少しずつやりがちです.なるべく脳を吸引する範囲を小さくしたい心理も働くと思います
しかし!はじっこからチョコチョコ吸引していては,著しく手術が滞ってしまいます.マイクロでいっぱいとったように見えても,実際は小指の先ほどもありません.もちろん,そのくらいで症状は出ません.(と先人が言っている).
と,いうことでイラストの如く,ロベクトミーの範囲をしっかりきめて,その範囲は一気に吸ってしまいましょう.イラストよりもっと大きくてもいいかもしれません.A2やDistal neckをしっかり確かめられるところまで吸いましょう.


ロベクトミーの手順
1.吸う範囲を決める.
2.ロベクトミーの予定線のくも膜をバイポーラで凝固してはさみで切開.
3.脳皮質を太め(2~3)のサクションでどんどん吸っていく.
4.向こう側のくも膜が出るまで吸う.

動脈瘤は,ロベクトミーの向こう側のくも膜の,さらに向こう側なので,思い切って吸いましょう.