2013/09/12

SAHに合併して,5年の経過で増大・ブレブが発生してきた右中大脳動脈瘤

H20年SAHで入院,左IC-PC 破裂ANクリッピング.小さな右MCA 未破裂脳動脈瘤をFollowしてきたが,拡大してきて,ブレブも認めたため手術目的に入院.
Domeは側頭葉に埋まっていた.Neck近くに赤い部分があった.Domeに付着していた静脈を側頭側に分離.
NeckとM2Temporal br.の間を確保.Domeの奥側に付着しているSphenoparietal sinusを噛まないようにミニクリップでクリッピング.Neck付近の赤い部分が残ったので,ミニの曲がりクリップでクリップ追加.





2012/04/24

定位血腫吸引術

脳出血に対するステレオですが,自分のやり方は,手術室でなるべく血腫をほとんど吸引してしまうようにしています.
あまりそのようにやっている人は少ないかもしれませんが,私が過去に属した病院でのやり方を踏襲しております.

計測は普通にCT室でします.
計測に従ってフレーム組んで穿刺針入れて,そこからです.20mlまたは50mlの注射器でかなりの圧で引きます.少なくとも40mlくらいは術場で吸引します.CTでの血腫計測値とほとんど同じくらいの量をなるべく吸引したいところです.
そのようなやり方は,出血してから2,3日してからなら再出血はありません.
術後のCTでほとんど出血がなくなっていることが目標です.もちろん,血腫が硬い時もありあまり吸引できないときは無理しません.

こわごわドレナージだけ入れといて,あとで病棟で数日かけて出すのも良いですが,なるべく術場で決着をつけてしまいたいです.


2012/04/23

IC-PC AN クリップ押し込む時に注意

IC-PC動脈瘤はクリップをアプライすると,その奥にある硬膜にクリップのどちらかのブレードがぶつかって押し込めないことがあります.ICに沿って横曲がりクリップを使うことも多いのですが,術野によってはストレートや弱弯の方が使いやすいことも.
で,いざクリップをNeckに挿入して,向こうに先端がぶつかって,それ以上行かない気がして,少しずつ閉めるんですが,大体は先端がDome途中のIncomplete clipになりがちです.

もっとクリップを押し進める必要がありますが,その時にクリップがズルッ!とすべって急に入ってしまうので要注意です.術者がなれてないときは助手が横からそのことを言ってあげた方がいいかもしれません.

2011/03/29

Sulcusの分け方

Sulcusの表面のくも膜はもちろん鋭的に切る.
Sulcusの中はInterhemiのように細いくも膜がちらほら張っているが,ここはバイポーラで鈍的に剥離できる.その際に,血管と軟膜がどっちについているかを意識する.どっちかに入り過ぎると軟膜がはがれて脳組織が出てきてしまうので,そうなっていたら修正しながら剥離をすすめる.

ともかく,表面は鋭的に,その下は鈍的にいける.

2010/05/11

クリッピングの呼吸法

例えば
スポーツをする時に呼吸法は大事です.テニスでは打球の瞬間に息を大きく吐くようにすることで力まないで力の入れ加減を調節できてコースの打ち分けができます.打球の時に息を止めると,力んでしまいコントロール不能になります.
自転車でもペダルを踏む時に合わせて息を吐く用にすると,より効率的に踏めるはずですが,レース展開が厳しいとゼーハーになりそんなにうまくはいきません・・脱線しました.

クリッピングの瞬間,これはもう緊張が最高潮になっています.ちゃんとブレードが入るだろうか,Ruptureしないだろうか,届くだろうか,スリップアウトしないだろうか,この角度でいいだろうか,ちょっと母血管に近すぎるか,もしくはちょっとNeckが余り過ぎか・・いろんなことが頭をよぎってしまいます.

そこで,クリップを持ったら呼吸法を管理することをおすすめします.術野に持っていく前にまず深呼吸.そして,ブレードを入れる時,さらに閉める時には息をゆっくり吐きながら閉めると,かなり冷静にゆっくりと落ち着いて閉めることが出来ます.

そういう自分ですが,いざ!閉めます!!という時にはすっかり呼吸のことを忘れていたりするので,クリップを持った時に呼吸法のことを思い出すことからはじめなければいけません.

2010/05/06

STA-MCA Bypassの術前検査は血管撮影不要

IC閉塞,MCA閉塞などにSTA-MCA anastoの適応があるかの検査ですが,これまでSTAをしっかりと確認するため,脳血流の側副血行路の様子をみるために血管撮影をしておりました.

しかし,STAはMRAできちんと見えるのが確認されております.さすがにLeptpmenigeal anasotなどの側副血行路の様子はわかりませんが,JET Studyのクライテリアで適応判断しているのでSPECTのRest&Diamoxで十分に判断できます.

もう,そうしている施設は多いのかもしれませんが,不要(かもしれない)な侵襲的な検査が不要になるのはありがたいことです.

2010/05/01

診療報酬改訂

脳動脈瘤頚部クリッピング術(一箇所)72000→103710
動脈形成術,吻合術 36000→52550

あまりお金に換算して考えてばかりはしたくないし,実際手術料はすべて病院に入るわけだけど,自分が,”これで何かあったら明日から外科医人生が終わるかもしれない”と思いながらしていることが100万越えと評価してもらえるのはちょっとうれしいように思います.

でも,今まで手術料が実感より安く見積もられていたことに,すっかり慣れてしまっている自分にも気付きました.(むしろ卑屈になってしまうくらいで,外科医はMな世界なのかも).

それと,クリッピングよりもアナストがこんなに高くなっている方が個人的には驚き感が大きいですね.

言いたくないと言いつつ,クリッピングとアナストで150万かぁ~.
これまで我慢して外科医をしている人には,この診療報酬改訂はもう少し外科医を続けるモチベーションになるかもしれない.すぐに慣れちゃうでしょうけど.

そもそも,正当な手術料の対価なんて誰にもわからないわけだから.

これから新たに医師になる学生さんとかは最初からこの値段・点数だから,これをもってして外科医を目指そうとか外科医が増えることにはあまりならないような気がします.

ブラックジャックみたいに1000万円とか5000万円とかならはっきりと効果が出るでしょうがね.

2010/04/17

脳ベラはもっと使え

1年ぶりの更新です.

先日,札幌で北海道脳神経外科手術手術研究会がありまして,札幌医大のビデオカンファレンスの流れをくむ,数少ない,純粋な手術の事を話し合う会です.ご意見番の端先生は相変わらずの元気さで,若者の手術ビデオに意見されており,とても勉強になりました.

その中での端先生語録より.

「もっと脳ベラを使ったらよろしい.」
端先生は,以前は脳ベラをなるべく使わないようにとおっしゃっていたようで,それを知っている元医局員はずっこけてしまうような発言のようです.
発言の趣旨は,昔はぐいぐい引っ張るような使い方だったからなるべく使わないように指導していたと.今時そんなことをする人はいなくて,やさしく脳を支えるように使うのであれば,何本でもたくさん使ったらいいじゃないかと.脳ベラをたくさん使って術野を作ってあげると手術が速くなるともおっしゃってました.

ただ,実際に脳ベラをたくさん使うと,おそらくヘラを支えるアーム(じゃばら)が邪魔になるのではと思います.
とは言え,使わないといつまでも脳ベラに習熟できないので,なるべくマイクロ操作のはじめの方から積極的に使って慣れることも必要と考えます.

2009/04/12

interhemiではFalx切開で位置推定

InterhemiでDisital ACA ANにApproachするときにDisorientationになりやすいです.当院では基本的にFrontal sinus開くのを覚悟で,Base側に開頭してProxymal sideからApproachしています.
しかし,Interhemiを剥離してうろうろしてしまうことがあります.
冷静にFalxを切開した部分を考慮してみると,そこからDome方向が推測できるはず.

かなりBase側でFalxを切った場合は,かなり手前にANはあるはず.
Falx切開部からそのまま剥離に進むと,Interhemiのもっともくっついてやりづらい所を操作しなければならない羽目になります.

もっと手前を探してみましょう.
ちなみにDistal ACA ANはFalxとくっついてしまうくらいだから,その程度の深さにあるはず.





Bridging Veinの存在にもよりますが,Frontal sinusが開かないくらいのやや高めに開頭,Falxを切ったときは,わりと近くにANがあるはず.
気づかずに奥を操作していて,ふと気づくとすぐ手前にDomeが顔を出してましたなんて・・・

2009/03/31

手術の最中に画像を見よう

手術中の予期せぬ合併症を避けるためには・・・自分がどこをやっているかOrientationをしっかり把握することが大事.と,脳卒中学会のイブニングセミナーで言ってました.

術者として動脈瘤に向かうとき,または動脈瘤と対面してしまうと,もう夢中になってマイクロから離れたくなくなります.しかし,この時点で記憶しているつもりの画像所見はけっこう曖昧ですね.
Orientationをつける,または動脈瘤に隠れている(SAHに埋もれている)Perforatorをイメージするためには,夢中になっていても一息ついて画像所見をもういちど見に行きましょう.

実は今でも,術者のいすを立つと,術者を変わられてしまうのではないかという不安に駆られてしまうのですが・・・

動脈瘤の手術は,地図を頼りのサイクリングに似ています.術者は,走りながら地図は見ることができない運転手と同じです.記憶を頼りにうろうろすると必ず道に迷います.まして脳内には青看板はありません.そのままクリップをかけるとよけいなものまで噛むかもしれません.面倒でも,気持ちが切れても,立ち止まって地図を見ることが事故を避けるのに必須です.

2009/03/11

慢性硬膜下血腫の血腫量を測定

普通の穿頭洗浄術で,いきなり生食を入れる前にチューブを硬膜下腔に入れて血腫を吸引します.以前はやってませんでした.「吸う」という動作が脳や血管を傷つけたらイヤだったので.

しかし,血腫を吸引してその量を大体把握するといいことがあります.
それは,CT,MRIでの所見に比べて吸引できる血腫量が少ないと,もしかして血腫が2層に分かれていて,その上層しか洗えていないことに気がつくわけです.
おおよそShiftしたり麻痺が出るくらいの血腫なら100mlは越えているでしょう.それに対して20~30mlしか吸えないときは,おかしいと考えてBurrholeから脳表が見えるか確認が必要です.見えなければ,Burrholeからでも隔壁や堅い血腫を破る必要があるかもしれません.

久々の更新の割には小ネタですみません.

2008/12/31

血管吻合は縫うところ以外が大事

年末ぎりぎり駆け込みの更新.手術が少なくなってきたのは事実ですが,それを言い訳にしないよう,何とか追加していくので来年もよろしくお願いします.


さて,いろんな学会などで血管吻合のワークショップが目につくようになりました.縫合練習用の人工血管もReasonableな値段で売り出されています.ネズミでの練習ノウハウが最近の若手向け手術本に紹介されています.

しかし実際の手術において,手術時間の短縮・手術成功の鍵は吻合前の準備で決まります.
STAの長さ,側枝のしっかりとした凝固または結紮,先端の処理,内腔の洗浄
開頭範囲(太いMCAをみつける),硬膜を広範囲に切ること
MCAの切開・・・内膜を傷つけない,STA断端より広く,MCA側枝のしっかりとした凝固.

吻合前にこれらの準備を怠ると,吻合作業そのものが大変になったり,吻合後の止血に手間取ったりしてしまいます.
また,準備でどこか失敗してしまうと,取り返しがつかないことが多いので注意が必要です.

2008/08/30

IC terminal ANの奥に注意・・・Optic tract

IC terminal ANのClipping.
Dome裏側のPerforatorとAnterior choroidal arteryを挟まないように気をつけましょう・・・・とは良く書いてある.

もうひとつ気をつける点が.
Domeの奥にあるのは?・・・・・Optic tractなんですね.
Clipを図の×印に入れすぎると,Optic tractを挟んで,視野障害となる可能性があるので,要注意です.

2008/07/19

小さなワタで,髄液コントロール

SAHの手術と思ってください.
イラストは左IC-PC ANの,いよいよNeck付近を剥離しています.


IC周囲のくも膜を剥離していると,ものすごい量の髄液が噴出してきます.特に,Neckの奥・ICの裏側に近いところをホジホジすると,フクシマ3Lサクションで吸いきれないくらいの髄液が出てきて,奥の視界が不良になります.
さてそんな時は?

サクションの先に小さいワタを置いて,ワタ越しに髄液を吸引します.
ごくごく小さいワタで良いので,それで驚くほど奥の髄液を良好に吸引できて,視界が良好になります.

2008/05/26

外向きIC-PC ANは注意しましょう

当たり前と言われてしまうかもしれませんが・・・

当たり前ばかり書いてあるブログなので.

正面から見て外(横)に出ているIC-PC ANは,術野としては立ち上がってこちらに向いてきます.
いつものつもりでSylvian fissureの深いところをバイポーラで開いた瞬間にDomeを破ってしまいかねません.注意しましょう.
まだICも見えてないし・・・と思ってごそごそやってると危ないです.とくに破裂は.
せめてSylvian fissureに入り込む前に,脳室ドレナージを打った後にSubfrontalに視神経~ICを確保しておきましょう.破れたらTemporary clipを入れられるし,自分が剥離している深さの目安になります.