年末ぎりぎり駆け込みの更新.手術が少なくなってきたのは事実ですが,それを言い訳にしないよう,何とか追加していくので来年もよろしくお願いします.
2008/12/31
血管吻合は縫うところ以外が大事
2008/08/30
IC terminal ANの奥に注意・・・Optic tract
2008/07/19
小さなワタで,髄液コントロール
2008/05/26
外向きIC-PC ANは注意しましょう
当たり前と言われてしまうかもしれませんが・・・
当たり前ばかり書いてあるブログなので.
正面から見て外(横)に出ているIC-PC ANは,術野としては立ち上がってこちらに向いてきます.
いつものつもりでSylvian fissureの深いところをバイポーラで開いた瞬間にDomeを破ってしまいかねません.注意しましょう.
まだICも見えてないし・・・と思ってごそごそやってると危ないです.とくに破裂は.
せめてSylvian fissureに入り込む前に,脳室ドレナージを打った後にSubfrontalに視神経~ICを確保しておきましょう.破れたらTemporary clipを入れられるし,自分が剥離している深さの目安になります.
2008/05/11
顕微鏡のピントは,基本ペダルで
手術は当然,浅いところから奥へと進んでいくわけですが,深くなっていく術野に常にピントをきちんと合わせることを意識しなければいけません.
ってことはつまり,何となくやっていると,術野が深くなってもピントが合ってないことに術者は気づかないことが多いわけです.モニターを見ている人はすぐに気がつきますが・・
サクションを駆使して,脳槽の深いところへ進んでいくわけですが,ひとつ進んだらピントを落とす(当院のマイクロではつま先右側のペダル),ちょっと進んだらまた右ペダル,を繰り返しましょう.
ピントを合わせるために,マウスピースでマイクロを動かすのは動きが大きくなり,素早い手術の妨げです.
いちいちハンドルを持つのも,もちろん遅くなります.
まとめ:マイクロ下で剥離が進むとピントがずれるので,素早くペダルであわせる.
2008/04/18
Acom aneurysm (Acom AN)は開頭の側頭部を使う
以前にも書きましたが,つい忘れがちなのでもう一度.
左側のイラストはどちらも左開頭です.
Sylvian fissureを剥離して,前頭葉と視神経の間を剥離,Interhemiを剥離,前頭葉に脳ベラをかけてたところです.
この辺までは,顕微鏡を寝せたり立てたりして,前頭葉越しにSubfrontal気味にApproachすることも多いです
しかし,いよいよA1を追って,同側のA1-2またはAcomにApproachするとき,前頭葉をさらに持ち上げつつあるときは,開頭の側頭側のSpaceから光を入れて,見上げるように視野を撮りましょう.それで前頭葉のRetractionを軽くすることができます.
Acom ANの開頭は,とかく前頭葉側を大きくすることが強調されていますが(対側の視神経までしっかり視るためには,それも大事),クリップに必要な視野・術野を得るためには,実は側頭部側が大事なのです.
もう一回肝に銘じましょう.
2008/03/20
Distal ACA ANのこつ
2008/03/07
慢性硬膜下血腫手術のコツ
慢性硬膜下血腫(CSDH)は,スタンダードにBurrhole開けて,硬膜下腔を生理食塩水で洗浄しています.
術前のCT,MRIでは見えない,血腫の隔壁が存在することが多いです.術後のCTで初めてわかるような.
なかでも隔壁が脳と平行になっていて,血腫が骨側と脳側の2層になっていることがあります.こういうとき,Burrhole開けて洗うと,あっという間に血腫が出なくなり,思ったより血腫量が少ない感じがします.
術後のCTで表面側のみ血腫が無くなり,脳側にたっぷりと残るはめになり,CT室からそのまま術場へ逆戻りになりかねません.
そうならないように,洗浄途中でBurrholeから脳表が見えることを確認しましょう.Burrholeは小さいので,無影灯の角度を調節しなければ見えません.それと,硬膜下腔の血腫を吸引してしまわないと見えません.
これらの工夫をして脳表がちらっとでも見えれば,ちゃんと洗えている可能性が高いです.もちろん,Burrhole部以外のところまでは見えませんが,手術中にこれくらいの気遣いは必要と思います.
2008/02/09
SAHの手術は予測が大事
手術をアクシデント無く,スピーディに進めるためには,予測が大事です.当たり前ですが,意外と忘れがち.
SAHの時,血腫を吸って構造物を確認していきます.確実に見て確認することはもちろん大事ですが,いちいちそれでは時間がかかります.何も考えずに血腫を吸っていて,見えた時には血管を吸っているかもしれません.
左のイラストは,リリケスト膜を破るために,IC外側の血腫を吸っているところです.漫然と吸っていると,前脈絡叢動脈(Anterior choroidal artery)を引っかけるかもしれません.そこに血管があることを強く意識しながら血腫を吸うと,ちらっと血管が見えただけで,確認することが出来てトラブルを回避できます.
こちらは(前交通動脈瘤)Acom ANに向かってアプローチしているところ.右前頭葉を視神経と剥離しつつめくっていきます(動脈瘤は後ろを向いているので,すぐには出てきません.)
聞かれれば,そこにA1が出てくるのは知っているはずですが,ついついめくってみて,見て,初めて手が止まります.
そうではなくて,そこにA1があるのを強く意識して(警戒して)めくっていけば,血腫の間からちょっと見えた段階で,手が止まり安全に手術を出来ます.
しつこいですが,当たり前のようで,いざその時に忘れがちです.
2008/01/26
ヴォイニッチの科学書で読んでもらいました.
手術に関する話ではありません.
脳神経外科速報 のおすすめの1冊,1枚,1軒というコーナーに,ほぼ毎月投稿しております.
2008年1月号に くりらじの科学系Podcastヴォイニッチの科学書を紹介いたしました.
せっかくなので番組に掲載された雑誌をお送りしたところ,番組内で取り上げていただきました.
とてもおもしろく,かつためになる番組なので,ぜひ一度お聞きください.
2008/01/14
Pterional approach 静脈はなるべく側頭葉側に残す理由
年末年始,更新するパワーを失っておりました.
年賀状で,奇特にもここを見てくれている方がいるとわかりましたので,今しばらく更新を続けようという活気がわいてきました.
2007年末はCEAを毎週していてたので,クリッピングや血腫ネタはあまりなくて,CEAネタが増えそうです.
と,言いながら今回は動脈瘤ネタです.
前頭側頭開頭,Pterional approach(Transsylvian approach)で,最初にすることはSuperficial sylvian veinを分けることですが.初心者には一般的に静脈と前頭葉の間で分けるようにと教えられます.
が,最近はそれにこだわらず,静脈と静脈の真ん中でもいいような風潮があるかと思います.私もそう思ってました.
(もちろん,Temporal polar app.等という特殊な場合は別です)
でも,静脈を前頭葉との間で分けて,側頭葉側につけるのには大事な意味があります.
Pterional app.では前頭葉に脳ベラをかけることが多いです.この時,シルビウス静脈が前頭葉側に残っていると,操作上,脳ベラでシルビウス静脈が圧迫されてうっ血してしまいます.その結果,シルビウス裂をさらに近位に剥離する際に,うっ血した前頭葉皮質から出血しやすくなります.個人差はありますが,バイポーラで前頭葉皮質を触るとすぐに出血して,未破裂の手術なのに術野が赤いなんて事態になりかねません.
長くなりましたが,そう言うこともあるので,なるべくシルビウス静脈は,脳ベラがかからないように側頭葉側につけましょう・・・という事になります.もちろん,静脈は個人差が大きいので,これにとらわれずにアプローチしやすいところで分けるのが一番だし,脳ベラのかけ方に気を遣う必要があります.